民宿(総合)

 民宿とは、民家などを宿泊所として旅行者などに提供する施設である。一般的に、旅館業法によって規定されている「簡易宿所」に分類されるタイプのものが多い。  民宿の強みは、大型旅館やホテルが参入しにくい立地においても営業可能な点にある。この利点を活かして、地方の名所旧跡周辺、山間部、海岸線などにおいて、観光客やハイキング・登山客、スキー客、釣り・海水浴客などをターゲットとした民宿が数多く開業されている。  民宿のビジネスモデルには2つあり、 ①旅館業法モデル 簡易宿泊所として登録し、主に観光や登山、釣り客など幅広い利用目的の人たちを宿泊者として受け入れる。外国人旅行者を呼び込むため、古い日本家屋や蔵を改修した施設、日本酒を揃えたバーとの兼業、ハラルフードに対応した食事提供、着物着付け体験サービスといった工夫を凝らしている例もある。 ②農山漁村余暇法モデル 農林漁業の体験などを目的とする人たちにターゲットを絞って宿泊者を受け入れる。経営者が農林漁業者である場合は、地元の新鮮な食材を使った料理の提供や、体験型サービスの導入など、地域色豊かなおもてなしで差別化に取り組んでいるところもある。 小規模民宿の損益モデル 閑散期:3人/日 7000円 180日 378万円 繁忙期:5人/日 7000円 180日 630万円 合計             1,008万円 中規模民宿の損益モデル 売上高   1800万円 売上総利益 1728万円 販売費一般管理費 1328万円  人件費   918万円  地代家賃  60万円  その他   350万円 営業利益   400万円 いずれのモデルでも民宿事業で、安定した需要を確保するためには、宿泊客のリピート率が重要である。 一般的に、民宿の事業基盤を構築するためには以下の活動が重要である。 ・民宿の案内は、ホームページやSNSサイトのほか、出版社や自治体が発行している地域のガイドブック、観光案内、旅行専門誌、新聞・雑誌広告などで行う。 ・外国人観光客の誘致に際しては、訪日前に自国で宿を選んでもらえるように、海外の旅行者向けサイトなどに広告を出すとよい。たとえば、有名な旅行者向けサイト『Trip Advisor』や、中国人向けの日本紹介サイト『日本漫遊』などに広告を出すことは効果的だろう。同時に、自社のホームページは、宿の説明から申込予約まで、多言語での対応が可能な仕様にする。 ・おもてなしのマナーや料理は、民宿の重要要素である。このほか、接客対応スタッフには、地域の名所旧跡や祭事、伝統産業、名産品などについても説明できる知識を持っておくことが要求される。また、外国人とのスムーズな意思疎通ができるよう、最低限の英会話能力や、外国語による読みやすいパンフレットをつくる工夫も必要である。同時に、各国の文化や宗教なども理解し、適切に対応する。 ・地域社会との良好な関係構築も必要である。地元の人たちの口コミや紹介で宿泊者を獲得することにもつながる。とくに、農林漁業体験民宿は、地元の人達の協力なくしては成り立たない。そのため、自治会活動や地元の祭事等にはなるべく参加し、地域社会での信頼づくりと人脈づくり。  さて、今般東京オリンピックを控え、日本が観光地としての注目を浴びている中、訪日外国人観光客数は増加を続けてきた。これに伴い、民宿にも外国人が足を延ばすようになり宿泊者数は大きく伸びてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、観光庁の旅行・観光消費動向調査では、2020 年 5 月の訪日外客数は、1,700人(前年同月比99.9%減)。単月の訪日外客数としては、JNTO で統計を取り始めた 1964 年以降、過去最少となっている。新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に旅⾏需要が停滞している状況が続いており訪日外国人観光客市場は消滅した状況となっている。  一方、日本人国内旅行の状況は以下のとおりである。 ○2020年1-3月期の日本人国内延べ旅行者数(速報)は9,381万人(前年同期比22.3%減)、うち宿泊旅行が5,282万人(前年同期比17.5%減)、日帰り旅行が4,098万人(前年同期比27.7%減)となった。 ○2020年1-3月期の日本人国内旅行の1人1回当たり旅行単価(速報)は 35,683円/人(前年同期比2.3%増)、宿泊の有無で見ると、宿泊旅行が 49,600円/人(前年同期比2.2%減)、日帰り旅行が17,745円/人(前年同期比 4.5%増)となった。 に利用人数は減ったが、単価が落ちていないということが分かる。これは国内旅行の魅力が落ちていないことを示している。  日本人の国内旅行需要では、近隣を中心とした“マイクロツーリズム”などから徐々に再開されており、8月に予定されている国内観光振興を目的とした「Go Toキャンペーン」が大きな波になると期待できる。「Go Toキャンペーン」は、新型コロナウイルイス感染収束後に日本国内の人の流れを創り出し、地域の再活性化につなげることを目的として、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象に、補助金の支出により需要喚起を目指す経済産業省・国土交通省の事業である。  「Go To Travelキャンペーン」は国内観光需要喚起を目的として、旅行会社が販売する旅行商品や、宿泊施設が直販予約システムで販売する宿泊プラン等を予約する際に、最大半額相当(1泊あたり最大2万円/日帰りの場合最大1万円)の補助が適用される。補助金額のうち7割は旅行代金の割引、残り3割は地域での土産品購入などの現地クーポンとして充当される。1人あたりの泊数や利用回数の制限はない。(一方、個人で手配する航空券や列車など交通機関は補助の対象外)  第一次補正予算にて事業総額1兆6,794億円が計上されており、旅行商品を最大半額相当補助する「Go To Travelキャンペーン(予算約1.1兆円)」や、飲食代を2割相当補助する「Go To Eatキャンペーン」、イベントなどのエンターテインメントを2割相当補助する「Go To Eventキャンペーン」などが実施される予定である。  トラベルズー社による当キャンペーンの利用意向は87.5%となっており、利用人数の大幅増が期待できる。また97.2%が年内の利用を希望しており、10月~11月の紅葉のシーズンがボリュームゾーンとなっています。泊数は1~2泊と短い泊数が想定されています。  「Go To Eventキャンペーン」の需要を取り込むためには、まず「3密回避」対策が必須である。  次に、コロナ感染拡大によりキャンセルした旅行に、キャンペーンを適用することで豪華な旅をしたい、という要望に取り組む必要がある。よって、これまでの宿泊台帳を基に、ダイレクトメールや電話営業を行うことが必須となる。  最後に、「Go To Travelキャンペーン」を利用するためには、①旅行代理店、②予約プラットフォーム、③直販予約システムが制度上必須となっている。そこで、キャンペーンが開始されると見込まれる8月上旬までに①~③すべての予約窓口をそろえ、フル活用することが必須といえる。

新時代の経営者のための戦略大全編集部