新型コロナ前と後で変わる新しい経営様式の論点整理

元の生活様式に戻る

 幾度となく大震災や経済危機を経験してきた日本だが、経験するたびに「教訓を忘れる」という能力を強化してきている。実際に大震災後に生活を変えてきただろうか?非常食や防災グッズを買ってそのまま賞味期限を切ら続けている日本であれば、新型コロナウイルスも「非常事態宣言終了後から75日経てば新型コロナの恐怖も忘れ、元の生活様式に戻る」と予想することが合理的結論である。

業務プロセスは多様化する

 ただし、経済・経営の世界では、新型コロナウイルス自体の脅威ではなく風評被害のリスクに対応するため、コロナ前と後で三密が生じていた一部業務プロセスは多様化することが確実である。

リテラシースキルが増える

 全業種、全職種の業務プロセスの中に、インターネット集客と衛生管理プロセスが追加される。例えばコピーライティング、撮影、編集、配信、集客がリテラシー(会社員として当然に求められる技能)となることが確実である。

会議形式は管理システムに移行する

 特にコロナ前から会議の生産性が低かった企業ではオンライン会議になるとより生産性が落ちるため、混乱・発狂し一時的にオンライン会議を増加させることになると予想される。中期的に会議体は削減傾向となるが、結果として会議はオンライン会議システムからredmineなどのプロジェクト管理システムに移行していくと予想することが合理的結論である。

市場シェアは大きく変わる

 一部業務プロセス以外何も変わらないが、経営の意思決定のQCDの優劣を原因として市場シェアは大きく変わる。

 市場シェアを奪う方法は、タイミングを見計らうのが一番である。ライバルが失策に陥り動きが止まった際に全力で攻撃を仕掛ける。これ以外に小が大を飲み込むことはできない。実際に非常事態宣言により事業存続を諦めた企業は多い。

 東京商工リサーチによれば、20年の休廃業と解散は19年比15%増の5万件に膨らむ予測であるという。一方、中に投資と試行錯誤を行い感染拡大後の成長に向けて仕込みを行っていた企業は業態を変えて生き残っている。

 例えば、企業研修を生業としている講師は、事務所に100万円近く設備投資をしてオンライン動画スタジオにした。モニターにライト、レフ板、映像切替え用スイッチングボードを用意して、オンラインでの企業研修と研修動画の販売事業を行っている。オンラインのため企業にとって必要な研修講師の数は減ったが、需要が少数の選ばれた研修講師に仕事が集中したため昨年度よりも稼働と売上は増加しているという。

市場シェアが大きく変わることで倒産や人材流出が頻出する

 このように市場シェアが大きく変わることで、各業界は混乱する。この影響で倒産や人材流出が頻出することが予想される。

 日本企業は、これまで自称専門家たちが口々に非難の対象としてきた内部留保と呼ばれる利益剰余金と現金預金が、比較的厚めに残っていた状態で新型コロナウイルス感染拡大を迎えることができたため、経営者が諦めなければ事業継続できないことはない。

 しかし、飲食、観光、アパレル、製造、介護、医療からは倒産と人材流出は加速する。上記業界から運転資金の要望があっても日本政策金融公庫と商工中金以外貸付実行はできないだろう。せいぜい信用金庫が飲食店に助成金を使ったテイクアウトをお勧めするくらいだ。金融機関と企業が月々の資金繰りに全神経を使うことにより、新規設備投資は伸び悩むだろう。

3年間の不況の可能性は高い

 新型コロナをきっかけとした不況と言われるが、不況の期間は長くても3年間である。

生き残るためには、今年度の黒字が必須である

 3年間企業経営を続けるための資金繰りで金融機関からの借入を選択肢にいれるのであれば、2020年度は黒字であることは必須条件となる。

恐れず、ただし第2波に備えよ

 以上、企業経営について検討してきた。忘れてはならないのは、新型コロナウイルスの感染拡大は収束していない。そのため、単純に感染拡大前の世界に戻ることは絶対にない。構えとしては11月以降には第2回目の非常事態宣言がでて4月、5月と同じ状況に陥るつもりでいることが必須であることを明記しておく。

ニューノーマル時代の経営戦略大全編集部