自立化する必然性がないから、幹部人材は成長しない
大前提として、人間は必然性がなければ動かない生き物である。
幹部人材として十分な資質とスキルを持った人材も、行動に必然性のない環境に放っておくと、目を開けて寝ながら仕事するようになり、どれだけ時間をかけても幹部にはならない。
従業員の育成の延長線上に幹部の育成はない。
従業員育成と幹部育成は全く異なる。
従業員と幹部の育成方法を混同していると、中長期的に社内の幹部人材が枯渇し、マネジメントが停滞し、事業の生産性が落ちる。
幹部育成は、早く着手した者勝ちが唯一絶対のルールである。
従業員育成と幹部育成の差に着目せよ
従業員育成=達成度評価
従業員育成は、従業員ごとに成果、スキル、将来性、態度を評価し、達成度により昇進と利益分配を行う。
従業員育成に必要な仕組みは、賃金表、人事評価表、等級基準書、目標管理の4つである。
幹部育成=環境必然性
幹部育成は、幹部の管理対象のチームの成果、将来性、態度を評価し、達成度により幹部の昇進と利益分配を行う。
幹部育成に必要な仕組みは、幹部自身と管理対象のチームの行動に必然性を与える経営計画、管理会計、目標管理である。
リーダーシップを必要とする人材には、行動の必然性を与えろ
アメーバ経営で有名な稲盛和夫氏は、JALの再建の際、経営計画と管理会計の仕組みを整えるまでJAL幹部に行動を迫らなかったという。
理由は、必然性と評価の仕組みがそろってはじめて幹部の行動の善し悪しが判断できるという哲学を持っていたためである。
リーダーシップとはつまり、必然性に気づき、必然性を言葉にし、関係者を説得し、協同行動を引き出すことである。
経営者が幹部候補に対して脅迫的な目標設定と進捗確認を行っても、中長期的にパフォーマンスを成長させていくことはない。
行動の必然性とは何か?
あったらいいな、できたらいいな、という空想の目標は決して達成することができない。
達成しなければならない、達成することが当たり前の目標は達成することができる。
必然性のある目標であるから、達成するための行動を行うことができる。
繰り返しになるが、幹部育成とは、端的に必然性を引き出す環境づくりであるといっていい。
アメーバ経営における必然性
アメーバ経営においては、経営計画から逆算した目標設定を幹部自ら行い、幹部同士の目標を共有する。
その結果の一つが、社内取引制度である。部門毎の採算性を明らかにするため、社内の部門同士で取引を行い、採算性を記録する。
自部門の採算性だけを見れば、取引価格を引き上げればよいが、会社全体の経営計画を実現するために設定した目標であるため、幹部同士の折衝で妥結することができる。
幹部育成は研修だけでは100%成功しない
幹部育成とは、端的に必然性を引き出す環境づくりである。
よって、目標の達成度と行動の有効性を測る制度、具体的には中期経営計画と管理会計、評価制度の3つがそろわなければ幹部は成長することはない。
高いリーダーシップ研修に通わせたところで、時間と費用のムダである。
中期経営計画の策定と管理会計は幹部育成の第一歩
中期経営計画がなければ、幹部候補に必然性のある目標設定と行動を働きかけることができない。
管理会計がなければ、目標の達成度と行動の有効性を測ることができない。
よって、中期経営計画と管理会計はどちらも同時に導入する必要がある。
今こそ、有効な中期経営計画策定と管理会計制度の導入をすべきである。
事業再構築研究所編集部