管理会計における適切な在庫管理

管理会計において、在庫は利益の源泉である一方、短期的にはキャッシュを食いつぶす厄介な存在です。

本稿では、在庫のデメリットである機会損失と不良在庫の防止策について、説明していきます。

機会損失と不良在庫の防止策で一番有名なのはトヨタ生産方式を構成する1要素であるJIT(Just In Time)です。サプラーチェーンへの参画企業である製品メーカーと部品メーカーが協働して需要に俊敏に対応しようという考え方です。

残念ながらJITだけを導入しても、機会損失と不良在庫を防止することはできません。そもそも、最終消費者市場の需要が不確かである以上、最終消費者市場の需要を「当てる」以外に問題を避けて通ることはできません。

ここで「当てる」と表現したのは、最終消費者市場の需要は常に事後にしか分からないのです。

需要の先行指標が必要になってきます。ただし、先に言っておくとそんな先行指標はありません。では、代替えとして適切なレベルのあるべき指標に何を使用すればいいのでしょうか?

ほとんどの量販店は現在52週の販売計画を週次で作成しています。メーカーの担当者は直近の数週間は量販店から出た確定オーダーの数字を入れます。それを超える先の週については販売担当者の予測値を入れます。この予測値は、POSデータやプロモーション計画の数字を反映させたものです。精度が高くないこの予測値を基に、リードタイムが長い部品を手配するため、部品在庫の過剰や欠品を引き起こし、機会損失や不良在庫が引き起こされていきます。

販売計画の精度を上げるための最初のステップは、POSデータで実売数をつかむことです。(POSデータはGkfなどの業者から入手することができます)POSデータを入手できれば、メーカーから量販店への販売台数から量販店の実売数を差し引いて量販店在庫を計算できます。

この在庫をもとに市中在庫を設定します。この市中在庫は、予想よりもだぶついていれば、担当者は何らかのテコ入れの必要性を認識できます。量販店の売り場責任者とプロモーション計画を共同立案するなどの対策が取れます。

しかし、市中在庫のままでは需要の先行指標として使用することはできません。

市中在庫と必要な在庫との差の「傾向」を図ることにより、

  • 需要拡大期に備え、前出しの生産で余裕を見込んだ在庫を積んでおく、
  • 需要減少期に事態を早めに検出し、徐々にブレーキをかける

ことができるからです。

例えば、4週のリードタイムで届けているときは、現在がN週であるとすれば、N週からN+3週までの生産計画は既に完了しています。必要な需要予測は、N+4週の販売計画となります。

  1. N+4週からN+7週の販売トレンドを読み、それが少々上振れしても吸収できる在庫を積む。これを必要在庫と呼ぶことにする(たとえば、N+4週からN+7週までの販売量合計の半分の在庫を積む。こうすれば、ある程度の需要のブレ(短期的需要拡大や需要減少も含む)に対応できる)
  2. N-1週(先週)の実在庫を把握し、それとN-1週の必要在庫計画値の差を検出する。この差をすべての販社で合計した値が非常に大きくなっていれば、大きなトレンド変動が起こっているとして、戦略在庫の積み上げと同様の月次の戦略的調整プロセスで対応する。

「必要在庫の水準を見張る」仕組みを構築するのです。

このようにしておけば、販売予測増に余裕を持って前倒しで対応できることになり、N+6週やN+7週になり在庫が足らなくなってから慌てて対応するよりは、はるかに生産への負荷を分散することができます。

ニューノーマル時代の経営大全編集部