管理会計運用の一手法「アメーバ経営」とは

前回の記事では、発生主義で収支状況を把握することが管理会計の第一歩であることを説明しました。

今回の記事では、管理会計を使って事業収支を改善する方法論としてアメーバ経営を題材に説明していきます。

企業の業績悪化の原因のほとんどは、寄ったりの問題を抱えています。例えば事業環境の変化を2,3年無視していたツケが回ってきたり、お客を大事にしていなかったり、収支の合わない案件ばかり押し付けられていたり、過大な不良資産を抱えて金利負担が大きかったり、意味のない価値観に頼りきりになっていたり。

目につく問題の止血には、必要性があれば痛みがあっても取り組むことができます。本当の問題は目につかない問題に取り組むことです。従業員、特に管理職の経営感覚の欠如からくる業績悪化への対処は事業改善最大の難敵となります。

よくある管理職の経営感覚の欠如は以下のようなものです。

  • 管理職誰もが誰かが何とかしてくれると思っている
  • 安全がコストに優先するので、コストはいくら計上されても仕方ない
  • 管理費は、必要経費であり、その必要性は疑わない
  • 事業計画は経営陣が作成するが、現場は非公式な独自の数値目標を追いかけている
  • 他部門の意思決定に口出ししない
  • 業務・サービスの均質化を図る目的のマニュアルが想定外の出来事への対処への障害となる
  • 経営幹部が現場に顔を出す機会は少なく、現場が経営を意識することもない

そして、残念なことにこれらは多くの日本企業に共通してみられます。

アメーバー経営は、管理職の経営感覚を高めるためのもの

アメーバー経営で有名な稲盛氏は、管理職の経営感覚を高めるために、以下の3つの施策を実行しました。

1.管理職の定義をリーダーへ定義を変更

  • 現場を知り鼓舞する、
  • 部門を超え全体のために率先行動する、
  • マニュアル優先ではなく顧客優先で現場に権限委譲し責任を取る

2.会社で共有する価値の定義を制定

  • 一人一人が経営理念を実現する仲間
  • 採算意識を高める
  • 目的と目標実現するために心を一つにする

3.部門別採算制度を導入

  • 計画策定者と執行者の同一化
  • 管理単位の細分化
  • 目標数値の現場への共有
  • 実際の数値の現場への迅速なフィードバック
  • 社内取引価格の制定

世の中には、「アメーバー経営は社内取引価格を使用した部門別採算制度のこと」と勘違いしている人が多いようです。しかし、価値観が共有されたリーダー同士でなければ、社内取引価格の設定時に問題が発生してこの制度はうまく働きません。

アメーバ経営の優れているところは、リーダーシップ教育、フィロソフィー、部門別採算制度の3点セットをそろえているところです。

ただし、アメーバ経営独特の社内取引価格は、市場情報を社内に迅速に伝達する手段として捉えるべきでしょう。自社に向いていないと思われるときは、代替方法を検討すべきでしょう。

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