ニューノーマル時代の営業力強化①

はじめに

新型コロナ感染拡大の影響で、営業に苦戦する企業が増えている。代表的な例でいえば「足で稼ぐ」タイプの営業手法をとってきた証券会社などがあげられる。すでにSBI系のネット証券会社が口座数日本一になるなど証券業界では環境変化が起きていたが、新型コロナウイルス感染拡大を契機に一気に状況が変わってしまった。

これまでも対面営業は、(1)取り扱いコストの高さ、(2)不正の温床、(3)不衛生というイメージが付きまとってきたが、顧客の意識の変化により対面営業そのものを見直さなければならなくなってきた。

本稿では、ニューノーマル時代の販促・営業力を強化を実現するための戦略について整理していく。

定義

事業とは、管理対応、業務処理、営業受注、販促集客の4つの活動によって構成される。

無断転載禁止

営業受注は、販促集客と業務処理という2つの活動と密接な連携を図る位置にある。

営業受注の目的は、取引条件を確定し、受注成約すること。

営業受注活動は、育成、受注の2つの工程に分解することができる。

販促集客を取り巻く環境分析

緊急事態宣言中、集客のツールの効果が大きく変わった。最も大きな影響は、チラシの効果がほとんど消失した。

ポスティングをしても、スーパーマーケットやドラッグストアの特売のチラシ以外、家から客を引きずり出すことができなくなった。ビラ配りしようとしても、通行人は怖がって受け取ろうともしなくなっている。客を選ばなければティッシュなどの景品を付けることで受け取らせることはできる。

過去のトレンドだった被リンク数によるSEO対策やブログ、YouTube動画などを利用した集客策は、競合が多すぎ効果を発揮しずらくなってしまった。ブログについては、日記タイプから辞書や説明書タイプのコンテンツへの検索表示トレンドへの移行が顕著になってきている。

代わりに集客効果が増大したのは、ネット広告である。特にGoogleで検索した結果がGoogleMapの情報と一致する場合に表示されるローカルリスティング情報は本サイトのアクセスを大幅に減少させ話題になるほど検索効果を発揮している。

同時に、SNSによる集客の成功事例が増えてきた。Facebookの動画機能を使い定期的なオンラインイベントを行うことで、ファングループの母数を拡大させ受注につなげてきた成功例は多い。最もSNSによる集客が成功しやすいのはFacebook。逆にClubhouseは一瞬でブームが去ってしまったため、ファングループの母数を拡大させることはできなくなっている。

今後は間違いなくSNSによる集客の巧拙が集客力に大きく影響を与えることになるだろう。

育成工程の重要度が劇的に上がった

これまでWebで申し込んでくる客はドタキャン、他社への乗り換え(スイッチング)、態度の悪い客が多いなど質が悪いと言われてきた。しかし、ニューノーマル時代に販促集客の環境が大きく変わった現在、Web集客は集客の柱の一つにしていく必要がある。言い換えれば、ニューノーマル時代は、質がいい客を作り出していくことが求められる時代になった。

質がいい客とは何か。

質がいい客とは、提供するサービスのQCD(Quality、Cost、Deliver)を理解し、サービス提供者を共同の目的を達成するパートナーとして処遇してくれる客である。

ニューノーマル前の時代には、販促集客、営業受注に育成工程がなく、あってもブックレットを作って配るか、メールマガジンを配信するくらいであった。つまり、質がいい客を育成するという目標がないために、見込み客を質が悪い客として扱っていたのである。

最近、営業代行の形態が大きく変わってきている。日本国内の名簿を片っ端からデータベース化し、属性に合う顧客にテレアポを行い、アポイント1件あたり単価の費用を請求するようになってきた。営業補助の作業を外注できるという意味では工程を効率化することが期待できる。しかし、サービス提供者が見込み客を育成しなくて質がいい客を作り出すことができるのだろうか?

今後は間違いなく、いい客の育成工程の巧拙が受注率に大きく影響を与えることになるだろう。

受注工程は、シンプルであること

対面営業は、これまでも(1)取り扱いコストの高さ、(2)不正の温床、(3)不衛生というイメージが付きまとってきたが、ニューノーマル時代の顧客意識の変化により対面営業そのものを見直さなければならなくなっている。

受注工程においてはDXが課題となっている。DXとはデジタルトランスフォーメーションといい、顧客体験の最適化を目的にデータベース化とオンライン化を進めていくことをいう。

DX化した受注工程では、発注元が発注できるようにシンプルな商品体系と価格体系である必要がある。複雑な体系では発注元は発注することができない。また、認知的不協和を緩和するため、取引内容や目的とする価値について十分に理解しているか確認し、記録、モニタリングしていく必要がある。

目指すべきは、DellComputerである。商品構成はシンプル。基本構成が提示されており、そこにカスタマイズをかけて仕様を決定する。オンラインで受注した情報は、直接工場に生産指示として共有される。決済手段は銀行振込みかクレジットカード。発注時にあらかじめ納期が表示されており、発注元はいつでも納期の確認が可能である。

誰がやっても間違いなく顧客が想像したとおりの商品サービスが手に入る。

今後は間違いなく、受注工程、業務処理活動のDX化の巧拙が営業力に大きく影響を与えることになるだろう。

事業再構築研究所編集部