管理会計は記帳の発生主義から

財務諸表には、P/L、B/S、CFの3つがあります。この3つの内で最も重要なものはどれでしょう?

企業にとって一番大切なのは利益だから、重要なのはP/Lに決まっている?

それとも、キャッシュフローの方が大事ですか?

ヒントは名称です。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書。一つだけ計算書ではないものがありますね。

貸借対照表。

この貸借対照表を、事業年度が完了してから年1回作成するのを税務会計といいます。一方、リアルタイムで事業ごとに貸借対照表を管理していくのを管理会計といいます。

黒字倒産を避けろ

「黒字倒産」という言葉があります。損益計算書上では黒字なのに現金が足らず、銀行取引停止になってしまう状態です。令和の時代に入っても、頻出しています。

一般的な事業では、支出や収入の発生が確定した時点で、実際の現金の動きとは関係なく金額を計上します。例えば、生産するための原材料費を3カ月ごとに仕入れ先に支払う契約になっていた場合。工場で生産した製品は毎月出荷され2カ月後にまとめて入金されていたとすると、売上は毎月発生します。この状態だと、売上が計上される月と、着金と出金のタイミングはずれてしまいます。

この状態を月次の試算表で確認しても、毎月の変動が大きくなり儲かっているのか、損しているのかわかりません。

発生主義

そこで、実際の支払いや売上とは別に、取引を鍵にして売上と費用を対応させていこうと考えるのが発生主義です。

発生主義では、取引が確定(出荷または納品)した時点での日付で帳簿を付けていきます。

例えば、通信販売業の場合、出荷した日に取引を確定し、帳簿をつけていくことになります。

発生主義で売上と費用を対応させる方法は一通りではありません。業種、業態だけでなく、企業ごとの対応に合わせていく必要があります。

管理会計の目的

黒字倒産までいかなくとも、「勘定あって銭足らず」に陥ってしまうことは避けたいことです。そこで、管理職にどんな活動が現金を増減させるのか意識して、事業を運営させる必要があります。いわゆる意識改革です。

管理会計を現事業に活かす方法

管理職の意識改革を実現させるツールが管理会計です。

特に、管理職がコントロールできる活動項目について、具体的な指標と基準を用いて示す必要があります。

管理する活動項目は単純です。

  • 買掛金の回転期間を長くする(支払いを遅くする)
  • 棚卸資産の回転期間を短くする(生産のスピードを速めたり、売上にすぐ繋がるようにする)
  • 売掛金回転期間を短くする(早めに代金を回収する)

例えば、製品在庫は1ヶ月以上持てない。材料も1ヶ月以上持ってはいけない、などです。

この基準で必要な資金しか事業部に与えない場合には、余計な材料を買ったり、余分な製品を作ったりすると直ちに資金ショートを起こします。さらに現金払いをルールにしておくと、資金ショートはできなくなります。

その結果、事業部は売れる分しか作らなくなっていきます。「減益は仕方がない。それでも金は残す」という「利益よりもキャッシュ重点」の原則が行き届いていくのです。

ニューノーマル時代の経営大全編集部