個人事業主と株式会社どちらで独立すべきか?

組織や企業から独立して経営者となる場合、個人事業主と株式会社どちらで独立するか、という問題が出てきます。今回は個人事業主と株式会社どちらを選択した方がよいのか、の判断基準について解説します。

結論

「お金が残る方」を選択するのが合理的判断です。

一般的な場合、税引き前経常利益が290万円がおおよその判断基準となりました。

そもそも、お金は残るのか?

ここでいうお金が残るとは、売上ー直接費用ー間接費用ー税金という公式で算出できる額のことを言います。

まずは、個人事業主、株式会社がちゃんとお金を残せているのか、見てみましょう。

平成24年の経済センサス調査では、個人事業者の1事業者あたり平均売上高は963万円、平均付加価値(売上高総利益)額は393万円となっています。

ちゃんとお金が残っていますね。

同じく法人の1事業者あたり平均売上高は7,967万円、平均付加価値額は1,974万円となっており、平均売上高で比較すると法人は個人事業者の8.3倍、平均付加価値額では5.0倍となっています。

一人でやるより、組織で取り組んだ方が「直接」「大きな額の仕事」を「複数」受注し、効率よく業務処理できているようです。

税金は3つ

税金には、国、都道府県、市町村に納める税の3種類あります。

国税は、税務署に申告納付するもので、主に個人所得税と法人税、消費税があります。

都道府県民税は、都税事務所に申告納付するもので、主に事業税、法人住民税があります。

住民税は、主に個人住民税、固定資産税があります。

個人事業主にかかる税金

国税:個人所得税、消費税

都道府県:事業税

市区町村:個人住民税、固定資産税

申告手続きとしては、国税を収める税務署と、市区町村に固定資産税の届けの2つです。

株式会社にかかる税金

国税:法人税、消費税

都道府県:事業税、法人住民税

市区町村:固定資産税

申告手続きとしては、3か所すべてに申告する必要があります。

個人所得税(税務署)

個人所得税は、個人の1年間の全ての所得(税引き前経常利益)から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。超過累進課税なので、複数の税率の組み合わせでの組み合わせで税額が決定されますが、簡易的に速算表というものがあるので、これで簡単に求めてみましょう。

平成27年分以降の速算表

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

例えば「課税される所得金額」が7,000,000円の場合には、求める税額は次のようになります。
7,000,000円×0.23 – 636,000円= 974,000円 実効税率13.9%になります。

法人税(税務署)

法人税は、株式会社や合同会社などの法人が事業活動を通じて得た各事業年度の所得にかかる税金です。区分は2つあり、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円以下の部分には15%、年800万円超の部分には23.2%かかります。資本金1億円以上の普通法人には23.2%が課税されます。

大まかにいうと、控除額も考慮した実効税率が15%超えるか超えないかが大きな判断基準になります。

消費税(税務署)

消費税は、個人、法人かかわらず税務署に支払う税金です。

生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みとなっています。商品などの価格に上乗せされた消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。
課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者となります。

例えば、仕入れで消費税を含めた金額を支払う場合、販売で受け取った消費税と支払った消費税金額の差額を納税することになります。

小規模事業者の事務負担を軽減するため、その課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則としてその課税期間の納税義務が免除されることになっています。

事業税(都税事務所)

事業税は、事業で得た所得について、都税事務所などを通じて都道府県に納める税です。

資本金の額(又は出資金の額)と所得等の大きさによって異なる税率を適用する不均一課税となっており、およそ3.5~7%が課税されます。事業税の最も大きな特徴は、「翌年の損金に算入できる」ことです。忘れずに事業税を損金算入しておきましょう。また、個人事業税の場合に限り、事業主控除額として年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)になっています。

住民税(個人は市区町村・法人は都税事務所)

都道府県民税とは、都内に事務所や事業所などがある個人や法人に課税される税金で、普通「住民税」といわれます。

個人の場合、納税先は市区町村になります。

前年の所得金額に応じた所得割+均等割が課税され、均等割は、個人都民税分は1,500 円、個人区市町村民税分は3,500 円です。 これに、令和5年まで防災対策で+500円が課税されます。

※1所得控除は総所得金額、分離課税の所得金額、山林所得金額、退職所得金額の順で行います。

※2都民税4%、区市町村民税6%

法人の場合、納税先は都税事務所になります。

こちらも法人税額に応じた法人税割+均等割が課税され、赤字でも均等割りの7万円は課税されます。

固定資産税

固定資産税とは、市町村に支払う税金で、毎年1月1日時点で住宅やマンション、土地といった不動産を所有する人全員に発生する税金のことで、不動産を所有している限り支払い続けなければいけません。 固定資産税は対象の不動産において、固定資産税課税台帳に登録されている人に支払い義務が生じます。

計算してみましょう

なかなか複雑ですね。

経営者給料を株式会社の損金に算入し、社会保険(健康保険、年金)も考慮して、「個人」と「株式会社と経営者個人」を計算して比較した場合、およそ税引き前経常利益290万円が判断基準になることが多そうという結果になりました。

結論

290万円を超える場合は法人設立、超えない場合は個人事業主

ニューノーマル時代の経営大全編集部