本稿では法人設立の際に迷う、株式会社と合同会社の違いについて解説します。
株式会社とは
株式会社とは、発起人が株式を発行して、資本金を集めて設立する法人の一形態です。
株式会社は、社会的に認知度が高く、合同会社と比べて守らなければならない規制が多いため信頼度も高い傾向にあります。会社経営の源泉となる「資本」の所有者と、会社の経営を行う人が分離しており、このとき資本金を提供した人が「株主」となります。また、経営を行う経営者は株主による集会である「株主総会」での選出により決まります。
合同会社とは
合同会社も、2006年5月1日にそれまでの有限会社の代替えの形で設けられた法人の一形態です。
合同会社は、比較的新しい法人形態のため社会的に認知度が低く、大手企業との新規取引や人材募集する際に信用度を低く見られてしまうことがあります。経営者と出資者が同一であり、出資者全員が有限責任社員であるという2つの特徴があります。つまり、合同会社は、出資しないと経営に参画できません。
では、具体的に株式会社と合同会社でどのような差があるのか、7つのポイントで見ていきましょう
1.設立費用
会社を設立するときには、法務局にて登記手続きをします。法務局で「登録免許税」がかかりますが、合同会社は6万円、株式会社は15万円かかります。また株式会社設立の際は定款謄本交付手数料2000円が必要となります。
その他、株式会社合同会社ともに資本金1円以上が必要となります。
株式会社 | 合同会社 | |
収入印紙代 | 電子定款の場合0円 | 電子定款の場合0円 |
定款認証の手数料 | 5万円 | 0円 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
合計 | 20.2万円 | 6万円 |
2.株式の有無
合同会社には株式がありません。
株式会社 | 合同会社 | |
株式 | あり | なし |
3.代表者の呼称
合同会社の代表者は「代表社員」となります。名刺の表記には規定はありませんが、合同会社の代表は決して代表取締役を名乗ることはできないので注意が必要です。
株式会社 | 合同会社 | |
肩書 | 代表取締役 | 代表社員 |
4.必要な役員数
最低役員数は、どちらも1名以上となっています。
株式会社 | 合同会社 | |
最低役員数 | 取締役1名 | 社員1名 |
5.役員の任期
合同会社の業務執行社員が退社した場合は、2週間以内にその変更の登記をする必要があります。ただし、退社する社員が、業務執行社員でない場合は変更登記の手続きは不要です。
株式会社の取締役の任期は、株式の譲渡制限がある場合は最大で10年、譲渡制限がない場合は2年の任期と決められています。
株式会社 | 合同会社 | |
役員の任期 | 株式の譲渡制限ありの場合、最大10年。ない場合は2年。 | 社員の任期なし。 |
6.決算公告義務
株式会社は、決算について官報または電磁的方法(インターネット)を通じて公告する義務があります。合同会社は、公告の義務はなく、定款に定めても定めなくてもよいことになっています。
株式会社 | 合同会社 | |
公告義務 | あり | なし |
7.重要事項の決定機関
株式会社の最高意思決定機関は株主総会となっており、取締役・監査役の選・解任など組織・運営・管理などに関する重要事項を決定します。決議に必要な評決数は過半数、2/3などは会社法に定められています。商号変更、事業目的変更、役員変更など決定事項の内容によっては、定款を変更し、法務局に届出が必要になる場合があります。
合同会社の重要事項の決定機関は、全社員による決議で決定します。定款で決議を業務執行社員に限定したり、表決数を過半数以上とすることも可能です。同じく、社員(出資者)総会を設置することができます。どちらの場合にも、決定事項の内容によっては、定款を変更し、法務局に届出が必要になります。なお、法務局に届け出を行う場合には、決定事項が記載された「社員の同意書」を添付することが求められます。
株式会社 | 合同会社 | |
決定機関 | 株主総会 | 全社員による決議 または、定款で定めた場合は社員総会 |
株式会社と合同会社の判断基準
ここでは、一般的な判断基準を示します。本稿以外にも積極的に情報を集めどちらの法人形態にするか判断してください。
・会社名を用いて金融機関や取引先と活発に取引を行い、年商1000万円以上の事業展開が想定できる場合は株式会社
・飲食店や美容室など一般消費者に対して店名や屋号を用いて事業を行う場合や、資産管理会社や家業として積極的に事業規模や企業規模の拡大を追わない場合は合同会社
ニューノーマル時代の経営大全編集部