飲食店(総合)

自分が提供する食事を通じて、顧客に直接喜んでもらうことができる飲食店。食事を演出し、喜んでもらえる毎日の充実感は他業界では得難いといわれています。

飲食業界の特色は業態の多様性です。飲食店には競合が多く、常に独自性を顧客に提供し、支持され続けなければなりません。その結果、ラーメン店をとってみてもでもイートイン、テイクアウト、デリバリー、フードコートなど業態は多岐に亘ります。その結果、開・廃業率は高い一方で、個人店であっても店の独自性が顧客の支持を得られれば、大手飲食チェーン店と対等以上の勝負をすることができる業界となっています。

代表的収益モデル

売上:席数×回転数×客単価×営業日数

費用構造

F/Lコスト 50%

家賃    22%

原価償却費 8%

水道光熱費 7%

通信費   1%

販売促進費 2%

雑費    1%

営業利益  9%

ニューノーマル時代の処方箋

①廃業を検討する

 新型コロナウイルスの影響は、終わりが見えません。一説には、ウイルスの感染拡大が収束するため3~4年かかるといわれています。これからの苦労を考えて、閉店方が楽、今なら円満に終了できる、という考え方であればすぐに閉店することをお勧めします。特に、景気の良かった2019年12月、2020年1月の2か月で満足のいく売上を作れなかった店舗は、これまで通りの営業を続けると年末までには事業継続できなくなる、と覚悟してください。

②資金流出を止める

 所得税・消費税・法人住民税・社会保険は、それぞれの窓口に相談すると納税・納付猶予を受けることができます。また、Webの更新やSNSプロモーションを外注している場合や不必要な設備のリースやレンタルを行っている場合には、新型コロナウイルスを理由に契約終了または支払い猶予、減額、プラン変更したい旨を打診してください。契約内容や交渉に不安がある場合には、商工会・商工会議所が実施している無料の弁護士相談をおこなってから申し込むことも可能です。

③資金調達する

 2020年2月、3月、4月と外出自粛、非常事態宣言が続き、日本だけでなく世界中の飲食店の売上が下がっています。このまま重症患者が増え医療崩壊が起きると現代医療はすぐに機能しなくなります。1918年のスペイン風邪を参考にすると、時期をずらして3波で押し寄せてくると考えるべきです。

スペイン風邪の第1波目:1918年3月、第2波目:1918年初秋、第3波目:1919年初め

特に、第2波は(第1波の)10倍の致死率(25%)となり、しかも15~35歳の健康な若年者層においてもっとも多くの死がみられ、死亡例の99%が65歳以下の若い年齢層に発生したという

国立感染症情報センターhttp://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html

つまり、それ以前はもとより、2020年10月には強烈な(外出禁止にちかい形の)非常事態宣言を覚悟しておくべきです。前年同月対比で-5%の月があるなら、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付を申し込んでください。5月1日まで、信金・信組では100万円程度の緊急融資しか対応してもらえません。

日本政策金融公庫への融資申込み方法にはコツがあります。

A.自治体の商工会・商工会議所の経営相談窓口に融資相談として2~3回通って新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資紹介状を書いてもらうか、「マル経」融資を申し込む、

B.商工会・商工会議所の指導員から日本政策金融公庫支店の国民生活事業の融資課長に連絡をいれてもらって、。

C.電話またはWebで日本政策金融公庫の窓口相談を予約

D.融資枠いっぱいで申し込む。

満額でも半額でも回答結果は変わりません。

今は非常時。借り入れられるときは、満額申し込みましょう。

融資申込みが終わってから、持続化給付金、東京都感染拡大防止協力金、雇用調整助成金、学校等休業助成金を検討してください。

④売上比率を変える

これまでの飲食店は、来店による売上がほぼ100%でした。この来店売上を50%まで落とします。どんなにわがままを言っても、新型コロナウイルス感染が完全に収束するまで業態を変える以外に生き残る可能性はありません。店舗の客席を埋めることに拘らず、売上の維持を意識するのです。

非常事態宣言と外出自粛の想定タイミングに合わせて、3段階に分けて売上比率を変更していきます。まずは、10月に予想される第2波目までに、テイクアウトとデリバリーを開始します。デリバリーはUberを中心とした体制になると思われますが、UberEatsは決済手数料含めおよそ売上の40%がキャッシュアウトするためテイクアウトを中心に店頭中心にプロモーションしていきましょう。

~2020年9月までの目標

来店売上  :50%

テイクアウト:40%

デリバリー :10%

2020年9月までに予想される第2波目には強烈な(海外の外出禁止令にちかい形の)非常事態宣言を覚悟します。この期間に限り、デリバリーを中心に売上を作ります。その場合、近隣へのチラシポスティングが役に立つでしょう。そのため、店舗営業が一切できなくなる場合が考えられますが、その場合には家賃の支払い中止や雇用調整金、持続化給付金で当座をしのぎ、いざとなったらUberの配達員の仕事をして糊口をしのぐつもりでいましょう。

~2021年3月までの目標

来店売上  :40%

テイクアウト:20%

デリバリー :40%

第2波を乗り越えると通常営業に近づいてくると予想されます。そこで、キャッシュアウトの大きいデリバリー比率を意図的に落とし、来店売上を伸ばします。

来店売上:75%

テイクアウト:20%

デリバリー :5%

⑤テイクアウト・デリバリーのメニューを決める

店内飲食以外のメニューの考え方は以下のとおりです。

安全性:雑菌が繁殖しない、冷えても美味しい

礼儀正しさ:注文して後悔させないために、こぼれ、汚れの可能性は予め取除く

演出:店主からより美味しく食べるためのノウハウを書いた手紙や、食べる側にとって、ついていて当然であろう調味料やおしぼりなどを入れる。公式Lineへの登録を依頼するのもアリ

効率性:収益性と顧客支持のバランスを取る

売上構造の変更に成功するためには、必ず上からこの順番でメニューを選定していきます。あまり多くても注文できないため、メニューは7つ以内に絞ります。

グランドメニューそのままより、盛り合わせの方が好まれる可能性が高いため、グランドメニューから3つ、盛り合わせを4つを軸に顧客の支持を見ながら調整してください。

テイクアウトを始める際には、家飲みセットとしておつまみ盛り合わせと酒類、アイスクリームをセットの実施を検討します。国税庁は地元の税務署に申請すれば早期に6カ月間限定の免許を付与する期限付酒類小売業免許を発行しています。

期限付酒類小売業免許

https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/kourigyou2016/index.htm

酒類の価格は、コンビニで販売されているアイテムであれば、コンビニに合わせます。流通が限定されていて入手が困難な酒類はお店で販売されている価格のままでいいでしょう。

⑥告知する

まずは、以下の内容を「店頭」及び「ドア」、「食べログ」「ぐるなび」「GoogleMap」「Hotpepper」「Web」、「チラシ」「ポスター」、「メニューブック」の5か所で告知してください。内容は目立てば目立つほど効果があります。遠慮せずにドンと大きく掲示してください

・営業時間例

営業時間:ランチ〇:00~〇:00、ディナー〇:00~〇:00【時短営業】

店休日:毎週月曜日【時短営業】

・当店のコロナウイルス対策例

近接間隔対応済、常時換気対応済、殺菌方法70%アルコール除菌、衛生管理方法入店時アルコール除菌

・テイクアウト例

対応時間:ランチ〇:00~〇:00、ディナー〇:00~〇:00

申込方法:事前予約制Webサイト&電話

容器代、別途頂戴します

・デリバリー例

対応時間:ランチ〇:00~〇:00、ディナー〇:00~〇:00

申込方法:Uberよりお申込みください

・店主からのコメント例

例:元気の源肉喰って、みんなで元気になろう!

⑤宣伝・広告する

テイクアウトのメニューとセットを決めて営業時間を告知したら、次にyoutubeオンライン動画をWebページに埋め込んだプロモーションを検討します。例えば、ピザ窯やステーキグリルをストリーミング配信して店舗のライブキッチン感をだします。顧客に、ライブキッチン映像を見ながら料理を食べてもらうわけです。

脳はお店にいると勘違いするため、再来店を促す強い効果があります。音は、「包丁の音」と「焼ける音」、「開栓」、「注ぐ音」の4種類を入れてください。

新時代の経営者のための戦略大全編集部