新時代の事業承継、4つの論点

事業承継は4つの類型に分けることができます。

①親族承継(例:長男への承継)

②従業員承継(例:のれん分け)

③第三者承継(例:M&A)

④事業縮小(例:自己倒産)

日本は元々①親族承継と②従業員承継が多く、③第三者承継であるM&Aの経験はそれほどありませんでした。

親族承継と従業員承継に関するノウハウは一般的に門外不出とされ、経理業務に特化した税理士事務所においては承継ノウハウがなく、また事業承継を契機に税理士契約が切り替えられてしまうため一般的な顧問税理士は、のらりくらりと承継問題を躱していくだけの状況となっています。

令和元年の事業承継の論点について、以下まとめてみました。

①親族承継

株式会社も個人事業主も事業承継税制の特例を利用することにより、株式会社は株式、個人事業主は主な固定資産の相続税と贈与税が免除または猶予されるようになったため、親族承継の論点は、主に家族の感情の整理と相続税対策となっています。相続対策については、メインバンクが高額な手数料で相続コンサルティングを提案してくることが増えています。ただし、相続コンサルティングの中身については一般的な内容にとどまることが多いようです。

②従業員承継

従業員は、大きく2つに分けられます。1つ目はいわゆるのれん分けといわれる従業員独立制度による独立。2つ目は③第三者承継に近い形で従業員に対して事業を売却する形です。主に、どちらも事業価値の算定が論点になっています。およそ事業価値の算定は、概算3000万円以下と以上で求められる算定根拠のレベルが変わってきます。顧問税理士と協力しながら事業価値を算定することになることが多いようです。

③第三者承継

第三者承継は、一般的にM&Aといわれる事業売却が主な手段となります。取引のプレイヤーに事業を売る側と買う側が必要になります。しかし、コロナ前は事業を売る側が少数で、事業を買う側の数が圧倒的に多い状況にあります。コロナ後については、売る側が増えてきていますが、事業存続が厳しい事業ばかりで買い手がつかず、さらに買い手の投資も先行きが見えずに控えられているため、M&A取引の成立は低調となっています。

④事業縮小

コロナ後は、経営者の高齢化、人手不足に加えて資金繰りが一気に悪化したとため事業継続を諦めて休廃業に向けて整理を行う選択をする企業が増えています。2020年の休廃業件数はおよそ5万件にのぼると予想されています。経営者も従業員も廃業した後に生活があり、相当の期間をおかないと取引先にも迷惑をかけるため、周囲の協力を得ながら徐々に事業を縮小させていく必要があります。

ニューノーマル時代の事業承継にはこれまでに増して短期間での事業承継の取りまとめが必要となっていることは間違いない。

新時代の経営者のための戦略大全編集部