非常事態宣言解除後、経営者は合理性に従え

新型コロナの新規感染者の拡大が(一時的にしろ)ピークアウトしてきた。すでに5月14日には39県で非常事態宣言が解除された。ロシアやアフリカでは新規感染者が急拡大しているが、日本においては、東京都、大阪府においても実質的には非常事態から復旧してきている、と判断していいだろう。

それでは、非常事態宣言解除後、経営者はどういった価値観を持って合理的判断を行うべきだろうか?

1.業務体制におけるウイルス、細菌対策

ロックダウンにより中国武漢と韓国では完全に新型コロナウイルスを封じ込めたと勝利宣言を出していたが、再び集団感染が発生している。

非常事態宣言後においても集団感染のクラスターが自社事業で発生した場合、間違いなく事業存続に重大な影響を受ける状況に変わりはない。そのため、業務体制を変更してウイルス、細菌対策を行う必要がある。

具体的には、見える形での3密解消と物理的隔離である。参考になるのは、NTTdocomoの取り組みだろう。6月1日から通常に戻すが窓口と事務所内の三密は解消し、物理的隔離を推進するためにWeb受付体制を強化している。

2.業態改革

ウイルス・細菌対策を進めるうえで、サービス、物的販売など提供方法で三密は解消し、物理的隔離しなければならない。これを実現するために業態を変更する必要があるのであれば、まずは「安全」を実現するための業態改革を進めなければならない。

具体的に業態改革という概念がわかりやすいのは、飲食業界である。飲食業界では、ジャンルとして和食やイタリアンなど料理があり、提供方法でインショップやテイクアウト、デリバリーがある。これを組み合わせて業態を形成している。コロナ前では、用途別の業態という潮流も見られていた。

ロイヤルホストではテイクアウトを進めていたが、結果として4月の売上を58%減少させる結果となった。1つの提供方法だけで損益分岐点を超えていくのは難しいだろう。今後は、複数の提供チャネルをもつことと、顧客にとっての前向きなメリットを提供することが必須条件となる。

3.仕入れ先の選定

中国で生産していたマスクや衛生用品が日本国内に入ってこなかったことは記憶に新しい。付加価値の高い原材料、最終製品だけでなく食料・汎用製品も同じである。党が憲法の上位概念である中国は今後ますますカントリーリスクを表面化させてくるだろう。そのため、中国偏重を改め、ベトナムなど他国へ調達先を分散させる意思決定が必要となってくる。

4.販売先の選定

インターネットは、長期的に需要と供給を均衡させる重要な技術である。これまで卸業を通じて企業や店舗、個人に販売してきたが、全世界的にリーマンショック以上の不況となった今、複数チャネルをもつこと、顧客にとって前向きなメリットを提供することは必須条件である。

具体的に、ネット販売や販売プラットフォームを通じた販売が主力の卸や2次卸の取引優先順位は大幅に下落する。

5.金融機関

5大銀グループが20年3月期決算で計上した貸倒引当金などの与信関係費用は、計2600億円と11年3月期以来の水準に達した。ただ企業業績が急速に悪化し、21年3月期はここから倍以上への拡大が避けられない。三井住友FGだけで2900億円と6倍近くの計上を見込む。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051501171&g=eco

東日本大震災の倍の水準まで企業の業績が落ち込めば、融資する銀行は自身の経営健全性に影響が及ぶ。このの中、政府系金融機関も含めて、直近期の決算が黒字になっていなければ来年の借入の可能性は難しいだろう。

よって、今期は含み益を吐き出すタイミングとし、生命保険や共済も含め含み益の現金化を検討すべきである。

6.従業員

休業要請に基づき雇用調整金を用いて雇用を維持しようとしてもいつか破綻する。作業は付加価値はなく、営業利益こそが付加価値である。人的作業をシステムに置き換え、付加価値を実現するための大規模な配置転換が必要になる。

7.株主

世界的不況の中、ほとんどの株主の財務状況は傷んでる。すぐにでも現金化を要求してくることが考えられる。自社にとって最良の資本政策がなんなのか、は重要な考え方だろう。経営者本人が買い取るのもよし、日本政策投資銀行も選択肢の一つに入ってくると考えられる。

新時代の経営者のための戦略大全編集部