厳しい経営環境で事業売却を検討したら、まず信頼できる専門家に相談
コロナ恐慌、後継者不在、高齢化を理由とした取引先の廃業など、厳しい経営環境に置かれた企業が事業売却を検討する場合、経営者は以下の4つの選択肢から一つを選ぶことになります。
①短中期での経営改善
経営改善計画を作り、まず経営者自らが率先して収益改善、財務安定性向上に向けて行動を開始します。具体的にはトップ営業、経営者貸付の資本組入れ、経営者給与の返上などがこれにあたります。
②親族への相続、第三者への事業売却
経営者が高齢であり、短期間での経営改善計画を実行できない場合には、親族への相続または、第三者への事業売却を行います。具体的には、長男への相続、メインバンクを通じた第三者へのM&A打診などがこれにあたります。特に厳しい経営環境では足元を見られて事業価値を低く算定され買い叩かれてしまうことがあります。
③金融機関との債務返済条件見直し交渉を中心とした事業再生
短中期での経営改善と並行して、借入金の返済スケジュールを変更して再度元本の返済を据え置く期間を設定する(リスケ)必要がある場合には、金融機関との債務返済条件見直し交渉を中心とした事業再生計画を実行します。
④廃業
誰が事業を引き継いでも事業継続が難しい場合には、廃業という手段を選ぶことになります。資産超過の場合には法的に定められた手続きを進めていくだけですが、債務超過の場合には金融機関などの債権者と交渉しながら廃業手続きを進めていきます。債権者との交渉においては経営者ガイドラインが一つの基準となることもあります。
ニューノーマル時代では経営状況が急転直下します。そのため、厳しい経営状況に陥った際の意思決定もプロジェクトの進捗も短期間で行わなければなりません。
そのため、事業存続の岐路に立たされた時のコツはひとつです。1人で悩まず、「取引や意思決定により損得が生じない専門家」にこじらす前に相談すること。これにより短時間で後悔のない意思決定を行うことができます。
損得が生じる専門家に依頼して大炎上した事例があります。2億円の価値があるビルと土地、金融機関からの借入3000万円がある会社が廃業することになりました。その際、妻がPTAで一緒だった不動産屋勤務の友人から、美味しい売買のやり方があるからといわれ、分からないまま言われる通りに手続きしたところ、結果として2億円のビルと建物を3000万円で譲渡し、それ以外何一つ残らなかったそうです。端的に言えば、上手い売買とは取引に介在した「専門家にとっての美味しい話」だったようです。しかし、悔やんでも建物はもう戻ってきません。
繰り返しになりますが、事業存続の岐路に立たされた時には、1人で悩まず、取引や意思決定により損得が生じない専門家に、こじらす前に相談することをお勧めします。
新時代の経営者のための戦略大全編集部