外出自粛時、経営者は何をすべきか

新規感染者の傾向を見ると、一時的にピークアウトしているようにも見える。

しかし、非常事態宣言の中での話であって、外出自粛を解除すれば人の流れは元に戻る。5月6日までの非常事態宣言後も何度も感染のピークがこないと断定する事はできない。

既に「アフターコロナに向けて」という威勢の投稿がSNSなどであがっているが、医療機関内の感染数が急拡大し、底が見えない状況の中で次のステージに向けた投資や取り組みは早急であろう。

景気とは、経済活動の活発さであり、人間の活動や気分が活発さの源である。活発に動くと感染リスクが高まる、という新型コロナウイルスの絶対ルールが効果を持つ間に景気が良くなることはない。

1918年に流行が始まり、1920年に収束したスペイン風邪は2009年の新型インフルエンザの世界的流行と比べて政治的・医学的対応が後手に回っており、新型コロナウイルスの感染拡大に最も近い。Wikiによれば、以下のとおり3波が確認されている。

第1波は1918年3月にアメリカのデトロイトサウスカロライナ州付近などで最初の流行があり[42]アメリカ軍のヨーロッパ進軍と共に大西洋を渡り、5月から6月にヨーロッパで流行した。

第2波は1918年秋にほぼ世界中で同時に起こり、病原性がさらに強まり重篤な合併症を起こし死者が急増した。

第3波は1919年春から秋にかけて、第2波と同じく世界で流行した。さらに、最初に医師看護師の感染者が多く医療体制が崩壊してしまったため、感染被害が拡大した。

この経緯を教訓とし、2009年新型インフルエンザの世界的流行の際にはインフルエンザワクチンを医療従事者に優先接種することとなった。

wikiペディア

外出自粛の中、院内感染が増加している状況では、現代医療が100%稼働し続けることは期待できない。第一次世界大戦時のスペイン風邪の流行タイミングをベースに予測していくことは、今後我々が辿る道だろう。

つまり、最低1年間は、全世界で経済活動が大幅に低下することを織りこむべきである。

それでは、経営者は今何をすべきか。地震や戦争などのリスクもあるが、新型コロナウイルスだけという条件で検討してみよう。

第1期2020年4月16日〜5月6日:非常事態宣言下で、まず命の安全、身の安全を確保する

非常事態宣言下では、外出自粛が要請されている。まずは、BCP(Business Contunity Planninng)の実行である。

まず、コロナウイルスから関係者の命の安全を確保する。

具体的には、出社頻度を低減させ、①石鹸による手洗いの励行と②外出したら全身シャワーを浴びる習慣の徹底をおこなう。

次に、身の安全を確保する。具体的には、ソーシャルディスタンスを実現するため、

①出社から帰宅まで、関係者は必ず安全な距離をとって勤務する

②社外からオンラインで進捗確認、意思決定、決裁できるシステムを導入する

③距離が取りにくい会議などは社内でもオンラインを使用する、窓口業務がある場合はマスク、手袋、次亜塩素酸水、ビニールカーテンを用いて対応する

④出社が必須な場合は最低2チーム制とする。どちらかのチームの本人または家族の罹患が確認出来たらすぐにチームを交代させ、罹患したチームは2週間完全自宅待機とする。

⑤出社する本人及び家族が罹患した場合、すぐに管理職に連絡が届くようにルールを設定し周知する 

第2期5月6日~5月31日:非常事態宣言下で事業の継続性を担保する

具体的には、ヒト:業務体制の確立と、カネ:借入による運転資金確保、モノ:事業に必要な原材料の確保、情報:見通しと計画である。

①業務体制の確立

今後1年間は非常事態宣言が続く前提で、業務内容、組織体制を縮小する。なお、従業員を自宅待機させている場合には、必ず雇調金を申請しておく。

②投資対象の変更

残念ながら、具体的に事業継続が困難になる業種は、感染防止協力の要請業種である。これ以外でも3密(密閉、密室、密接)の条件が必要な業態は、これまでのままでは事業継続は困難である。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html

そこで、ビジネスリストラクチャリングの定石どおり、まずは出金を絞る。特に、3密が必要な業務内容は、早期縮小・撤退し新規投資は一切中止する。一方で、新型コロナウィルス対策へ投資を集中する。

③新規借入枠の設定

少なくとも、1年分の見通しと運転資金は現金で持っていたい。気になる記事がある。約5兆円の現金をもつトヨタが新規で1兆円の借入枠を設定したというのだ。

トヨタは1兆円の借入枠を設定し、当面の現金調達リスクを低減

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03821/

満額の利子補給が受けられる公的な制度が次々に準備されているため、必要であれば日本政策金融公庫、商工中金、信金、信組など金融機関担当者に問い合わせをすることをお勧めする。

④内外注政策の変更

さらに、新型コロナウイルス感染拡大により、中国は調達拠点として信頼に値しないことが明白になった。事実として、自社工場で作ったマスクでさえも共産党に徴収され、輸入できなかったのである。今後、事業にとって重要な物資の調達は、期待できるはずはない。

2400億円の予算をつけ、生産拠点の国内回帰や多元化を政府が支援

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-09/Q8GCPQDWRGGD01

第3期:6月1日~9月30日業態変革を行う

新型コロナウイルスの感染は、医療機関関係者でも1年〜3年かかると言われており、今後の見通しと計画にどのようなモデルを適応させるのかは悩ましいところである。

もし、生き残ると決めているのなら、これまでの業態から新たな業態に事業を変革しなければならない。分りやすい例で言えば、居酒屋がテイクアウト専門店になり、オンライン飲み会に対応するメニューを作り、オンライン飲み会を仕掛けることである。

つまり、経営者は、コロナウィルスがこれまで以上に襲い掛かかってくる10月1日までに、これまで磨き上げてきた事業の「業態を変更する」という宿題に答えを見つけなければならないのである。

新時代の経営者のための戦略大全編集部